そうよ私はサビオラの女

隣の席で働いている女の人にひげが生えている。
いや、これは冗談なのではない。本当にひげが生えている。
うぶ毛とか生易しいもんじゃない。鬱蒼と生い茂ってる。
ドイツのシュヴァルツバルト(黒い森)を思い出す。

あのひげ一本抜いたら、どうなるんだろう?
ばらばらに体が砕けて、なんか超人たちに奪われてしまうのだろうか?
やっべー、後五分で倒さないと右腕爆発しちゃうよー!
がんばって、ロビンマスクー!

駄目だ、まともに顔が見れない。

喋りかけるな。
仕事の相談とかするな。
「これコピー20部で足りますかねえ。」
「ああー、一応、25部とっておいたほうがいいんじゃないかな。3部は予備用に、残りの2部はお前のひげを剃り落とした時用にな!!」
うわあああ、言いたーい。

でもこの人なんなんだろ、口紅は塗ってんだよ。
塗る時気付かねえのかよ。
「あ、ひげ生えてるけど、残しておこう。これって私のチャームポイントだもんね。」
お前はわき毛のマラソンランナー・エゴロワか。

さあ、オリンピックスタジアムに最初に現れたのはルーマニアのキリチェンコ、あ、しかし、猛然と一人追い上げてくる選手がいます、お、これは日本代表の選手です、ひげがトレードマークの平井(仮名)です、さあ、追い上げる、追い上げる、最終コーナーで並んだぁ、キリチェンコもスパートをかける、必死のひげで追いかける平井、直線には二人だけしかおりません、そして最後並んで固まるようにして、ゴール!!!勝ったのはどっちだ?ビデオ判定を待つ平井!ああぁぁーーっと、ひげの差、まさにひげの差で平井金メダル!

「ひげでも金」
ニッコリと金メダルを持って微笑む平井選手。殊勲のひげには汗がたっぷり。



つうか、剃れよ。ほんとに。