シセがない

鍵をなくした。比喩的な意味ではなく。
比喩的な意味でなく鍵をなくすと大変だが、比喩的な意味で鍵をなくすことも大変だ。たとえば「彼女の心の鍵をなくした」らもうその彼女とはグッバイロンリーデカメロンであり、「お兄ちゃんの部屋の鍵をなくした」ならもう帰ってこれない引きこもり片道切符であり、「お父さんの鍵をなくした」ならそれは機械父で早々に要チューニング。
かくも比喩的な意味で鍵をなくすことは大変なのだが、今回俺は比喩的な意味でなく鍵をなくしたので、普通に家に入れなかった。大家さんに自分の駄目さ加減を精一杯罵られつつ合鍵を渡してもらって、今この場にいる。比喩的な意味で俺は大家さんに殺意を覚えたのだが、その反面比喩的な意味でその痛罵に快感を覚えたのも事実であり、このもらった合鍵を比喩的な意味でもう一度なくしたふりをしてみようか迷っている。比喩的な意味で俺は変態だと思う。