she is so foolish

頭の悪い女がいる。
そう、世の中には頭の悪い女がいる。そして、頭の悪い女と同じくらいの数の頭の悪い男も当然いるわけで、また、それに倍する頭のいい女と頭のいい男がいる。ただ、忘れてはならないのは、頭がよくも悪くもない男がいて、頭がよくも悪くもない女もいるということだ。そう考えると、全体の数として、頭の悪い女が占める割合はごく低い。
小林稔侍が打席に立った場合に送りバントをする確率くらいのものだろう。もしかしたら、小林稔侍が新入りのバイト店員に手を出さない確率よりも低いかもしれない。あるいは、小林稔侍が東京で就職した後に地元の同窓会に出たときに、かつての同級生に軽蔑の眼差しを送らない確率よりも低い。さらに、小林稔侍がきび団子の代わりに毒団子を犬、きじ及び猿に与えない確率よりも低い。小林稔侍が真っ白な雪道に最初の足跡をつけようとする子どもに先んじて自分の足跡をつけない確率よりも低い。泣きそうな子どもを振り返る小林稔侍の顔の得意顔と言ったら。そして、小林稔侍が最後の唐揚げに手を出そうとしたらもう一方からも箸が伸びてきたとき、相手が「どうぞどうぞ」と箸を引っ込めたのをいいことに「じゃ、遠慮なく」と汚らしく唐揚げをむさぼらない確率よりも低い。こうなるともう頭の悪い女が存在する率が極めて低いことになる。
だが、逆に考えてみよう。
小林稔侍が10万円の宝くじが当たったときに、妻にも知らせずこっそりと自分の懐にしまう確率はかなり高い。小林稔侍が親友のKを差し置いてお嬢さんを嫁にもらってしまう確率もかたり高い。小林稔侍が飲み屋の会計時に「あっれ、やっべー、財布忘れたかも」と言いながらポケットをまさぐり、いやらしい目で「おごれ」と同僚に訴えかける確率も高い。ましてや、小林稔侍が積年の恩を忘れて敵軍に寝返り、かつての主君の処刑時には「これが戦国の流儀ですからな」と自らの立場を正当化した挙句に、唾を吐きかける可能性は相当に高いといわざるを得ない。そうなると、社会には頭の悪い女が占める割合が非常に高く見えてくるだろう。これは現代社会特有の数字のトリックだ。
さて、集まった頭の悪い女たちはどうするか。徒党を組み始めるだろう。狙うは小林稔侍の首一つ。あっという間に前線を突破し、小林稔侍の居城へと迫る女たち。長年の享楽に慣れてしまい、小林稔侍軍は軍としての体裁を保っていなかったのだ。女たちに囲まれたときも、小林稔侍は豚を相手に後出しじゃんけんをしている最中だった。何たる道楽者!だが、女たちにつかまれ、ついに首を刎ねられようとしながら、小林稔侍は最後の意識でこう思ったのだった。
「頭悪くても、おっぱい大きかったらオッケーだよね。稔侍的には。」