熊谷

熊谷のことを考えると、とても笑ってしまう。
今こうしている時にでも熊谷のことを思い出すだけで、尻の穴で伊豆が独立するほど笑える。
熊谷は暑い。最高気温が日本一である。南じゃないのに。全然関東なのに。南の島にあるさっぱりした解放感、ヤシの木大食い選手権、ハリケーンに乗って出勤などのメリットを何も享受できずにただ暑いだけ。そのアンバランスさを押し付けられた不幸を考えると、血に塗れた井上陽水が湯豆腐を作るほど笑える。
そして、熊谷は寒い。暑いのに、寒い。最低気温が低い。繰り返すが、暑いのに、寒いのである。甘いのに、酸っぱい、そんな恋の味。辛いのに、しょっぱい、そんな青春の味。そして、高さ、速さ、うまさを兼ね備えたロシア人ストライカーがどうしても日本のこたつに馴染めずに日本を放浪していた頃、偶然たどり着いたのが熊谷。そこで暖かいもてなしを受け、精神的な安定を得たストライカーは必殺シュート「KUMAGAYA」を武器に、Jリーグ得点王となるのだった。そのロシア人の名前がワレナベニフタビッチで、秋茄子を嫁に突っ込むほど笑える。
さらに、熊谷は日本におけるソンブレロの聖地である。ソンブレロの出荷数は日本一、さらには世界でも有数のソンブレロの産地となっている。熊谷にはソンブレロ愛好者(通称ソンブレロ愛好者)が大挙押し寄せ、道端にはソンブレロ免許を取得するために必要な証明写真屋が軒を連ねている。また、ソンブレロ型にチーズを象ったソンブレロバーガーが大人気だ。その大通りからちょっと横に入った整備されてない路地では、子どもたちがはだしで草ソンブレロに興じている。みな、楽しそうだ。熊谷は2018年のワールドソンブレロ選手権の開催地として立候補している。決定すれば、日本では初の快挙となる。今日の活気に沸き、明日への期待に胸を膨らませるソンブレロ・熊谷。だが、その平和な日々が八年に及ぶソンブレロ戦争(通称ソロ戦争)のプロローグでしかないことは、あァっ、そこはナイスになるスイッチですから、あァっ!やめてくださぃぃ、ナイスになっちゃいますから、熊谷先輩!俺ナイスになっちゃいますからぁあ、あァっ!熊谷先輩!
かように、熊谷は不可思議な土地である。一説によると堅固な城壁に囲まれ、近付くものには発砲も辞さない城塞都市だとも噂されており、その真の姿を見たものはあァっ!そんなナイスになるスイッチを!連打しないで!連続でナイスになっちゃいますから、あァっ!熊谷先輩!俺、連続でナイスになっちゃいますから、あァっ!熊谷先輩!ヴィクトリアスマッシュ!