世の中に絶えて桜のなかりシェバ

今日、仕事場に行き机の引き出しを開けると、そこでは笑っていいとものリハーサルが行われていた。

タモリさん入りまーす!おはようございまーす!」
「おはよう。今日はなに?」
「はい、今日のテレファンショッキングはオダギリジョーさんです。」
「誰、それ?」
「誰って、タモさん頼みますよー。」
「いや、ほんとに。知らないんだよ。」
「え?まじっすか?」
「だからまじだって言ってるだろ。どんな人?」
「昨日話したじゃないすかー、電話で。」
「いや、ごめん、全然覚えてない。」
「もーう、ほんと勘弁してくださいよー。遠藤憲一さんから紹介されたじゃないですかー。」
「ああ、遠藤くんね。知ってるよ。」
「そりゃ、知ってますよ、昨日話したんですから。」
「電話で何話したっけ・・・・?」
「えーと、なんかいいことあったとか、この間はお世話になりましたとか・・・・。」
「みんなに言ってるだろ、それ。」
「そうですけど。ていうか、それでいいんですか、タモさん?」
「で、オライジ・ジョン、って誰?」
「オダギリ・ジョーです、タモさん。」
「オレンジ・コンプレックスね。で、どんな人なの?」
「・・・・俳優です。二枚目系の。」
「ジュリーみたいなもの?」
「古いですけど・・・・まあそんな感じですね。」
「ほうほう。テレビ?映画?」
「両方です。映画は最近引っ張りだこです。」
ハウルの動く城とか?」
「ええ、じゃ、オダギリさん、次のシーンでは突然獣に化けて『ウギャー』でお願いします!って、この夏はジブリ至上主義!!」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・あー、うん。まー、適当にやるわ。」
「・・・・お願いします・・・・あ、オダギリさん入りまーす!」
「髪切ったぁ?」

鳴り止まない拍手。
私は「そーですね」と言って、引出しを閉じた。
その日、私は大口の契約を1件結ぶ事ができた。家に帰ると、猫が死んでいた。私はその骸を梅の木の下に埋めた。